回復した経済報告
ディック・ハンター
内閣府が発表する二〇〇四年一一月の月例経済報告によると、
「景気は、このところ一部に弱い動きはみられるが、回復が続いている」
とある。その前の一〇月、九月は
「景気は、堅調に回復している」
だ。八月と七月は
「景気は、企業部門の改善が家計部門に広がり、堅調に回復している」
となっている。六月、五月、四月も文言を少し変えただけで内容は変わらず、三月、二月、一月は文末が
「着実な回復を続けている」
である。要するに年間を通して回復し続けていることになる。ちなみに二〇〇三年はというとさらに表現が繊細で
「持ち直している」
である。
一体何がどのように、どの位向上しているというのだろうか?
来年はどう表現するつもりなのか?
完全失業者数というものがある。完全失業者とは、
一 仕事がなくて調査週間中に少しも仕事をしなかった
二 仕事があればすぐ就くことができる
三 調査期間中に,仕事を探す活動や事業を始める準備をしていた
以上の三つの条件を満たす者のことである。
一九九九年(平成一一年)三一七万人
二〇〇〇年(平成一二年)三二〇万人
二〇〇一年(平成一三年)三四〇万人
二〇〇二年(平成一四年)三五九万人
これに対して就業者数はというと、
一九九九年(平成一一年)六四六二万人
二〇〇〇年(平成一二年)六四四六万人
二〇〇一年(平成一三年)六四一二万人
二〇〇二年(平成一四年)六三三〇万人
(出典:財団法人女性労働協会)
失業者の数が増え続け、就業者の数が減少している点を考えてみても、どう景気が回復しているのかが疑問である。
増税の問題も庶民にとっては大問題だ。
国の税収は四〇兆円を超えているのに、支出は八〇兆円以上、足りない三〇数兆円は国債を発行して借金をし、これを毎年繰り返している。財源が足りないから税金を上げて国民から徴収すれば良いという考え方である。年齢と共に収入も上がっていく年功序列方式も今では崩壊し多くの人々が収入の増加が見込めないのに、負担の増加を納得する人がどれだけいるだろうか。国の偉い人達は限られた税収の中でやりくりをする能力がないのである。国民に責任転化して逃げるのではなくて国民の負担を少なくする方法を先に考えるべきだ。
アルバイトなどの求人情報誌を見ていると、都心近郊では、時給は八〇〇円から一〇〇〇円ぐらいが一番多い。時給一〇〇〇円としても八時間働いて八〇〇〇円、週休二日で月一六万円の収入となる。しかし、ここから税金を引かれ、さらに健康保険、年金の負担をすると、一人暮しの生活はかなり厳しい。年金を払わないフリーターが出てくるわけだ。
実生活ではとうてい景気が回復しているとは感じられない。
来年の経済報告はもう「回復している」という文言は使わないでほしい。
2004/12/16
(C) Dick Hunter 2004